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症例

残根(重度むし歯)を小矯正で保存する

こんにちは福岡市西区九大学研都市の昭和歯科医院・院長 木南意澄です。

むし歯における最終ステージである「残根期」における治療の話をします。
歯はむし歯治療を繰り返すたび、歯の寿命を縮めることになります。

そして、むし歯の最終地点が残根です。
歯ぐき、骨の中に歯の根っこだけが残っている状態です。
程度によりますが、保存する治療が不可能で抜歯に至ることが多くなります。

従来型治療における歯の一生

  • 天然歯期


    全く歯を削っていない状態

  • 詰め物期


    神経残存で修復された状態

  • 失活期


    神経が死んでかぶせてる状態

  • 残根期


    切り株状で根っこだけの状態
    保存か抜歯の瀬戸際

  • 喪失期


    歯を抜いた失った状態

  • 欠損治療期


    インプラントや入れ歯で人工歯を作った状態

今回は比較的、軽度の残根だったので、小矯正(矯正的挺出)を行い、歯を保存した症例を供覧します。
患者さんは62歳の女性で右上前歯の差し歯が外れたのを主訴にいらっしゃいました。

全体的に治療スタート


2016年1月13日のことです。
他の部位にもむし歯や欠損など様々な問題があったため、全体的に治療を行うことになりました。

その中でも悪かったのが、主訴の右上2、そして、右上4、5の3本でした。
かぶっている冠が外れかかっていて、外すと残根状態でした。
さらに残根部がむし歯になっているため、むし歯菌に感染している歯質を除去していくと、どんどん歯が短くなり、歯ぐきの下に見えるだけになりました。

教科書的には歯ぐきより下にしか歯が残らない場合は抜歯です。
しかし、今回は小矯正(矯正的挺出)を行い保存することにしました。

矯正的挺出



根管治療を行った後、金属のフックを一時的に残根内へ埋め込みます。
このフックを仮歯からゴムで引っ張ることで、歯ぐき、骨の中から残根を引き出します。
この治療法は根っこの長さがある程度必要ですが、条件が合えば、長期的安定を期待できます。
挺出開始1か月で十分、健全歯質が歯ぐきと骨の上に来ました。
右上3(犬歯)は動かしてないので、基準と考えるとよくわかります。
歯周外科を行い、歯ぐきを元の位置に戻します。

挺出装置

挺出開始

挺出開始1か月後

歯周外科

挺出治療、歯周外科後、6か月の状態

歯ぐきの上に健全歯質を獲得しており、かぶせ物ができるようになりました。


2ケイ酸リチウムのセラミック、E-maxによるオールセラミッククラウンを装着しました。
長期安定を期待でき、また、審美的にも隣在歯と違和感のないものができました。


治療終了時


先日、治療3年後のメインテナンスにいらっしゃいました。
機能的にはもちろん、審美的にも治療直後と変わらない状態を保てていました。

冠をかぶせる治療は単純にできる場合もありますが、長持ちさせようと考えると一工夫、二工夫が
必要になります。
今回は残根を保存する矯正的挺出とそれに伴う補綴治療についてお話ししました。

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