
術前診査診断の重要性
もし、私がインプラント治療において1番重要なことは何ですか?と問われたなら。
迷わず、「診査診断です」と答えるでしょう。
もちろん、インプラント処置をきちんと正確に、確実に、素早く行える技術も非常に大切です。
しかし、そのインプラントの位置が適切な位置でなかったら?元も子もないですよね。
「決められたことを正しく行うこと」は必要であり、とても重要ですが、「正しいことを判断し、行うこと」の方が先にあるべきで、より大切なのです。
術前診査診断で大切なこと
欠損治療を行うに当たって、まず、どんな治療を行うかの診査診断、話し合いが必要になります。
インプラント治療になる前の段階での治療計画における診査診断です。治療全体を考えるとこれが1番重要なステップかもしれません。
しかし、ここではインプラント治療になったとしての術前診査診断に絞って書きます。大きく分けると2つの術前診査診断が必要です。
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全身状態の診査診断 - インプラントと全身疾患
インプラントは外科処置があり、異物を口の中に留置する治療です。そのため、内科的疾患との係わり合いがあります。その診査診断は非常に重要です。 - #02
インプラント埋入部位の解剖学的診査診断 - 解剖学的診査診断
インプラントを安全、確実に行うために必須となります。CTを利用して3次元的な診断を行います。
インプラント治療において、最も重要と言えます。
インプラントと上顎骨

インプラント治療を行う際、上顎は下顎に比べ、様々な要素において、注意が必要です。
一般的なインプラントの成功率も下顎に比べ、5~10%低くなっています。
その最大の原因は骨密度が低いことです。
特に臼歯(奥歯)部はタイプⅣと呼ばれる極めて疎な海綿骨でできていることが多いため、オッセオインテグレーションの力が弱くなります。
また、上顎洞が近いため、骨造成なしで長いインプラントを入れることが困難な場合が多くなっています。
様々な手法でこれらの留意点は解消できるのですが、その診断が不可欠になります。
- #01
上顎における診査診断 -
上顎洞とは蓄膿のときに膿がたまる鼻の横に左右対称にある空洞です。
インプラントを埋入するために、上顎骨に穴を開けていくと、上顎洞に当たります。 上顎洞を損傷すると、鼻出血や上顎洞炎(蓄膿)を起こす恐れがあります。
よって、上顎洞に当たらないよう診査診断を行う必要があります。
まず、レントゲンによる診査診断を行います。 簡便で骨と歯の情報を大量に得ることができます。
上顎洞を扱う場合は上顎洞の状態やより多くの情報があった方が安心です。
CTを撮影した場合は、さらに3次元的情報が得られます。 - #02
前頭断面 -
顔面に平行に切った様子です。骨と上顎洞の状態がより鮮明にわかります。また、骨の幅、上顎洞までの距離も明解に分かります。CTによる計測の方がより正確だと言えます。
インプラントと下顎骨

インプラント治療を行う際、下顎は大きな血管や神経があるので、注意が必要です。
ただ、一度、オッセオインテグレーションを獲得すれば、骨密度が高いため、強固な付着を得られ、長期的予後を見込めます。
上顎骨と違い、骨が硬いため、骨造成の際、骨を内側から押し広げることは難しく、外側に盛り足す形になるのも特徴です。
- #01
下顎における診査診断 -
下顎臼歯部において、注意するべき解剖学的部位は下顎管です。
下顎管とは下歯槽神経と下歯槽動静脈が交通している骨の中にある管です。下歯槽神経を傷つけると同側の下唇からオトガイ部にかけて、神経が鈍麻、もしくは麻痺します。
まず、レントゲンによる診査診断を行います。 簡便で骨と歯の情報を大量に得ることができます。下顎管までの距離に余裕がない場合はCTを撮影して、正確な計測を行っています。
下顎前歯部は骨内に埋入できれば、比較的事故にはなりにくい部位です。
下顎管は4、5相当部までしかないため、骨内であれば、解剖学的には安全です。
しかし、上顎前歯部同様、骨が非常に薄いので、インプラント処置としての難易度は高くなります。
少数歯欠損の場合はミニインプラントを適応する場合があります。