
感染根管(根尖性歯周炎)は、
成功率の低い、怖い病気
むし歯や外傷により、歯髄(歯の神経)が死んでしまうと根管(歯髄が入っていた根っこの管)にバイ菌が入り、感染根管となるリスクがあります。感染根管になると噛んだときに痛みを感じたり、歯ぐきから膿の出る穴があいたり、ひどくなると顔まで腫れることもあります。レントゲンで見ると、根っこの先に黒くなった像を認めます。これは骨が溶けていることを示します。感染根管を治療するには根管内を機械的、化学的に清掃する必要があります。しかし、根管は細く、深く、曲がり入り組んでいるため、入ってしまったばい菌を一定数以下にするのは非常に困難です。
歯によってはどんなに上手な先生が治療しても症状が改善しないものがあると言えます。アメリカの専門医の感染根管治療成功率は約80%と言われています。これは根管治療しかしないスペシャリストが自費治療(1本10~30万円程)で行ったときの成績です。日本で制限のある保険診療で行ったときの成功率は半分以下という論文もあります。
根管は複雑な形態をしているものがあり
完璧な治療はまず不可能である
(FRANK J. VERTUCCI Endodontic Topics 2005, 10, 3–29より引用)
根管治療の成功率
抜歯![]() |
感染根管治療 (初回) ![]() |
感染根管治療 (再治療) ![]() |
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アメリカの専門医 | 90% | 85% | 80% |
日本の保険治療 | 65% | 40% |
複数の論文抜粋
感染根管治療の成功率を高める3つの環境

マイクロスコープ
まずはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)の設備です。
根管治療において、見えると有利な根管の奥ははっきり言って、肉眼では全然見えません。
感染根管治療の成功率を上げるにはマイクロスコープとそれを使いこなす技術、そして、マイクロスコープ用の器具が必要になります。

CT
次にCTです。
感染根管治療には必ずレントゲンが必要になります。
デンタルと呼ばれる精密なレントゲンで根管の状態を把握して診断、治療計画を立てます。しかし、デンタルは2次元なので、奥行きの情報はわかりにくくなります。そこで登場するのがCTです。
3次元に根管の状態がわかるので、より正確な診断と治療計画を立てることができます。これにより、歯根破折などの治らない状態も治療前にわかることになります。

ラバーダム防湿なし

ラバーダム防湿あり
ラバーダム防湿
当院では感染根管治療に限らず、むし歯治療や修復治療にもラバーダムを使用しています。歯科治療において、唾液に含まれる細菌や呼気による水分が治療部位の歯質に付着すると再感染や脱離の原因になります。
よって、口腔内と治療部位を分けるためにラバーダムシートを設定しています。また、ラバーダムは患者にとっても治療中快適に過ごせると考えています。

Before

Treatment

After
精密な根管治療の症例
- 主訴
- 1か月前から右下奥歯がたまにしみる
- 診断
- 右下第2大臼歯象牙質う蝕 歯髄に及んでいる可能性が高い
⇒歯髄壊死 - 治療方法
- 感染根管治療、ダイレクトボンディング
- 治療期間
- 2回 3週間
- 費用
- 148,000円(税別)
- 備考
- 直接覆髄症例ではない
歯髄壊死のため、感染根管治療を行った